それいけ、みっそうか!








その日、警視庁密葬課に激震が走った―――――








やあ、みなさん初めまして。
私は警視庁密葬課課長の真鍋匠だ。
日々、公には出来ない事件を秘密裏に処理する
隠れた正義の味方だと思ってくれて構わない。
存在さえ隠蔽されている為、
こんな地下深くに隔離されているんだけどね…。
ああ、因みにこの部屋のすぐ下が件のラビリンスです。


各々が好き勝手に動いているようなイメージが
強いかなと思うんだけど、こんな我々でも一応は
警視庁のルールに乗っ取って職務を全うしているんだよ。
基本的に私はこうして、事務作業をしたり、ね…。


ほら、うちの課って基本的に日本国憲法に触れるでしょ、やってる事。
下で箕輪が好き勝手やる分にはいいんだけどね…。
あれは表に出っこないし、キチンと処理出来るし。
だけどさ、こう、事故とか、器物破損とか、
そういうちっちゃな諸々の処理って面倒なんだけど、
私の仕事なんだよね…。
正直、書類が多すぎて多すぎて
多種多様過ぎてやってられなくなるし、
そもそも基本的に事務作業なんて向いてないんですよ私…。
そういうの向いてるんだったら密葬課なんていないでしょ?
身体動かす方が圧倒的に向いてるのに、
他があまりにも事務方出来ないから私にお鉢が回ってきたというか、
面倒ごとを押し付けられたというか…。


こんな生活してるんだから、勿論独身だしさぁ。
この前たまたま学生時代の同期に会ったんだけど、
子供がもう中学生だって。
そりゃそうだよ、普通ならそうだよ…。
真鍋はいつまでも若いなぁなんて言ってさぁ、
そりゃ確かにあいつは腹も出てて年相応に老けてたけど、
そういうのってあれだろ?幸せ太りとかってやつなんだろ?
こんな生活してりゃ腹なんて出てらんないでしょ、
そんなの即、死につながるからね。
そもそも殆ど家になんて帰ってないよ。
ここで暮らしてるようなもんだよ。
もう、本当嫌だ。
こんな生活本当に―――――


「ちょっと、あんた」
「何だい、鷹さん」
「さっきからブツブツブツブツと。とうとうイカレちまったのかい」
「ねぇ鷹さん、もう少し道路を走る努力をして貰えないかな…
 始末書の枚数が人を殺せる厚さに」
「あんたに届け物だよ」
「…」


お分かり頂けただろうか、私の状況を…。
基本的にみんな外に出てて、ここにはいないんだよね。
鷹さんはほら、私のトランスポーターだからいるんだけど…。
窓もないこんな場所に鷹さんと二人きり…いつも…。


鷹さんから渡された封筒は警視庁のもので、
珍しい事もあるものだと思いつつも
ペーパーカッターでそれを開ける。
こういうの手で破く奴が嫌いでさ…。


「…!!!!!!!!」
「何だいBOY、一人で騒がしいね」
「…新卒が採用された…」
「何?」
「えっ?え?これ何時付??え?今日?いや、届くの遅くない?」
「悪いねぇ、ずっとそこにあったみたいでさ」
「…箕輪!!」


どうして他人宛の書類を止める事が出来るの?
何回言っても絶対に私の元まで届かないよね??
だったらもう箕輪に渡すのやめてもらえないかな…。


「人手が増えるのは大歓迎さ、よかったじゃないか」
「どうしよう鷹さん…」
「何だい」
「新卒だよ?しかも、女の子だよ!?」
「!!」


密葬課に新卒が配属されるのは史上初の出来事で、
挙句それが女子。
配属の意味が分からないのも無理がない。
上は何を考えているんだ…。


「こ、こんなとこに若い女なんて必要かな!?」
「あたしだって女子さ」
「(今そこ!?)」


配属の意図を考えるがまったく読めない。
少し考えさせてくれ…。



≪警視庁密葬課のメンバー≫

私こと、真鍋匠。警視庁密葬課を束ねる長。
特徴は左頬に生えた獣毛性色素性母斑のような毛。
基本的に食事はバロット。
気持ち悪いから見てないとこで食えってよく言われる…。
次に三鷹 花…鷹さん。
私の車のトランスポーターにして、我が密葬課の紅一点。
紅一点…。
そして嵐童 公平。
今は機動隊に属してるけど、本当はウチの尖兵。
特徴は巨漢と…容姿や言動に異常な雰囲気を帯びているとこかな。
で、最後。
私の郵便を決して私まで届けたためしがない男、箕輪 勢一。



ダメじゃね…?
この中に若い女子、無理じゃね…?


「ちょっと」
「無理だよ、これは…」
「ちょっと、あんた!」


噂をすれば何とやらだよ。
鷹さんが入口の方を顎で指す。
狼狽したままゆっくりと視線を動かした。


「何で…」


何故なんだ。
思わず漏れた言葉。
そこには大変可憐な、少女と呼んでも遜色ない女が佇んでいた。
身の丈は160センチもないだろう。
足も腕も胴も全てが細く、本当に同じ生き物なのかと疑う程だ。
白い肌に赤い唇が映え、栗色の髪が――――――


「ダメだこいつは。もう話を聞いちゃいないね…
 あんた、名前は何て言うんだい」
と申します」
「今日付で密葬課に配属になったってのは、あんたの事かい。お嬢ちゃん」
「宜しくお願いします」


だから何故なのだと。
こんな可憐な少女が存在していい場所ではないのだ。
こんな、窓一つもない隠された小部屋に存在していい道理が無い。
というか、気が引けるだろ、どう考えたって…。
ウチの仕事知ってる?
密葬課って何してるか知ってる??
密葬してるんだぜ?


「…ちょっと」


こっち来て。
頭の中をどうにか整理しなければならない。
もしや彼女は、上層部が見るに見かねてよこした
事務員ではないのか?
以前から幾度となく
内勤の人間を寄越してくれという申請を上げていたが、
その申請がようやく通ったのでは??
これまでの却下の連続は夢だったのでは?
おまえの所に普通の職員を回してもすぐに殺されるだろ、
だなんて悪態をつかれ(しかしあながち間違いとも言えないのが辛い)
泣く泣く全ての庶務を私が行っていたが、
その分の業務を彼女に任せればいいのでは…?


「へぇ、あんたいい大学出てるんだねェ。キャリア組かい」
「(違った!)」


いやもうこれ、本格的に意味分かんないぞ。
この年でこの風体でキャリア採用で、何で密葬課なんだよ!
ええー?何これ、嫌がらせ?
ウチが迷惑ばっかかけてるからその仕返し??
いやいや、あんたらの後始末で動き回ってんのウチなんですけどー。
ウチがなけりゃ、
色々表沙汰になって警察の威厳も何も失墜の一途なんですけどー。


「あの、課長」
「!」
「精一杯頑張りますので、ご指導ご鞭撻の程、宜しくお願い致します」


何を…何を頑張るというんだい、お嬢さん…。
だけれど、その時の彼女の笑顔が
余りにも可愛らしく眩しかった為、
うん、よろしく、だなんて間抜けな返事をしてしまった。




業務日誌(読んだら署名!)

・新人が入りました


真鍋 三鷹





完全思い付きで(しかも仕事中に)
思いついてやっちまったオール
オールという名のオリキャラ
海賊でいうところの第三世界です
というか、課長なんて最近ようやく名前出たのに
私は何故彼をメインに話を回しているのだろうか…
自分でもまったく理解出来ていないのですが、
(私の中の)課長は至極使い勝手がいいので楽しい
もっと出番増やしてほしいぜ。。。
しかし、課長いくつなんだろう??
ポジション的に三十代後半から四十代前半だと思うんだけど
若すぎるだろ見た目が。。。
まあ、撻器様が存在する以上、
年齢なんて符号でしかないのかも知れませんね。。。

2015/09/12

FOG.