暴君ネロの善行について

• 優し気な横顔の男だと思っていた。
  こんな有様だから自分という人間は
  騙され続けて転がり続けたわけだ。
  
  
  まず人を見る目が相当にない。
  恐らくそれは血筋というやつで、
  人の良い両親も騙され続け借金を増やし失意のまま病死した。
  借金から逃げるように残された子供たちは離散した。
  
  
  一番年上の優しい姉は借金取りの言いなりとなり
  どこぞの置屋へ売られて行った。
  唯一、この状況を常に憎み危惧していた長兄は誰よりも先に逃げ、
  どうなったかは知らない。
  
  
  もっと年下の子供たちはどうなったのだろう。
  人買いに攫われたか。
  
  
  全てを捨て町へ出たは住み込みの女中として庄屋に雇われ、
  とりあえずの生活を送る事となった。
  
  
  見ず知らずの娘を女中として雇った理由はすぐに分かった。
  若旦那は方々から若い娘を雇い入れ好きに慰み弄んでいた。
  そういう男だった。
  
  
  嫌で仕方がなかったが、それを受け入れる以外に術も知らない。
  同じような境遇の娘たちも皆、
  諦めの色を浮かべた眼差しでぼんやりと暮らしていた。
  
  
  男は商売女を事の他嫌うもので、
  こうして自ら若い娘を手籠めにしているようだった。
  
  
  初めてその男に犯された夜、逃げ出して初めて長女の事を思い出した。
  場所が違うだけで結局は同じ事をしているのだと思え笑った。
  
  
  は器量が良かった為、男の気に入りとなった。
  キレイな召し物を与えられ、女中としての仕事は免除される。
  
  
  こんなに快適な暮らしは産まれて初めてだとほくそ笑んだのも束の間、
  後数年も経てば男の興味は他の娘へ移り用無しになるのだという、
  当然の事実に思い当たり息詰まる。
  
  
  この世界で私は何一つとして生きる術を持ち合わせていない。
  事実を手にしたら何故だか全てが色褪せて見え、
  こちらの身体を求める男の冷えた指先にも一切の感傷を抱かなくなった。
  
  
  男の寵愛は僅かながら、それでも確かに削り減りゆく。
  気づきたくもない心の移り変わりに
  思いがけない傷を負いながら夜の町へ飛び出した。
  
  
  どうせ行く場所もない。
  翌朝には同じ屋敷に戻る他、選択肢はないのだ。
  
  
  
  「…こんな時間に、どうしたんだい」
  
  
  
  一人で。
  夜の町をフラフラと歩いていたの目前には
  頭から血を被ったような男が立っていた。
  
  
  足音に気づかなかったのか、
  こちらが気づいた時には一寸先にまで近づいており、
  驚きの余り声も出ない。
  
  
  そんなの様子に気づいた男はニコリと笑う。
  酷く屈託のない、まるで子供のような笑顔だった。
  
  
  行く場所がないんだね、とこちらが言葉を綴る前に呟いた男は、
  よければ俺の屋敷においで、と囁く。
  一も二もなく頷いた。
  そこでなければ別にどこでもよかった。
  
  
  男はの手を取り、花のように歌いながら屋敷へと誘う。
  元々、警戒心が欠落しているのだろう。
  数十分ほど歩きついた裏路地の扉を潜り、屋敷の裏口へ潜り込む。
  若旦那の屋敷の数十倍はあるであろう広い屋敷だ。
  
  
  静かにしてね、みんな起きちゃうから。
  男はそう言い、人差し指をの唇にあてる。
  先の見えない長い廊下を見つめれば闇に飲み込まれそうで、慌てて男を追った。
  
  
  男が案内した部屋は見る限り全てのものは朱で、
  部屋の真ん中に置かれた布団に驚く。
  そういう事なのかと気づいた時には既に男は
  の腰を抱き寄せ口付けていたのだし、
  舌先をぐいと割り込ませながら慣れた手つきで帯を解いた。
  
  
  あの屈託のないまるで子供のような笑顔にうっかり騙されていたが、
  当然こうなってしかるべき展開だ。
  
  
  真夜中に見知らぬ女を拾うという事は、そういう事だ。
  こちらが名を聞くより先に布団へ身を沈められたは
  されるがままに流される。
  これまでの人生と同じように。
  
  
  男は服も脱がずに指先を舐め、の足を開かせる。
  己の吐息だけが響き渡る室内で肘をつき、
  少しだけ身を起こした状態で足の間に座る男を見ていた。
  
  
  男は何も言わず、だけれどあの笑顔を張り付けたまま指先を膣に出し入れし、
  こちらの様子を伺っているようだ。
  最初の数分は何となくぼんやりとした感覚を覚え、
  それでも確かに性器は熱を持つ。
  
  
  男の指が二本に増え、浅い場所でくの字に曲げられる。
  同じ場所を擦る様に押し上げ、熱を持った身体は一気に感覚に押しつぶされる。
  
  
  初めての感覚に怯えたが思わず静止の声を上げても
  男は当然何も言わず、淡々と指先を押し上げる。
  
  
  ああ、と身を震わせどろりとした液体が
  股の間から垂れ流された感触も束の間、男は動きを止めない。
  
  
  やめて、やめてと同じ言葉ばかりが無意識に唇から零れ落ちる。
  身を捩り快感の苦痛から逃れたいが、
  男の左手が腰をしっかりと掴み離さない。
  
  
  気持ちよさの何たるかもよく分からなかった身体には強すぎる衝撃だ。
  全ての感覚は度を越せば苦痛となる。
  
  
  ああ、と息も絶え絶えになった頃には全身に汗をかいていて、
  身動きも取れない。
  
  
  虚ろな視界の先に覆い被さってきた男が見えた。
  辛うじて酸素を欲す唇を一気に奪い、
  とどめをささんばかりに指先を動かす。
  
  
  酸素を求める唇は男に舌に蹂躙され得る事が出来ない。
  薄れゆく意識の中、残ったものは―――――
  
  
  
  「やめて！！！」
  「やめないよ、」
  「ふざけ」
  
  
  
  氷の刃で四肢は突き刺され身動きは取れない。
  そんな状態でこの男はこちらを犯すのだ。
  
  
  幾度も幾度も死ぬ事の出来ないこの身体を散々と痛めつけ、
  その対価と言わんばかりに身を喰らう。
  生きながら壊される人形のような、そんな無為な存在に堕ちた。
  
  
  あの夜、この男に抱かれ呼吸を奪われたは確かに死んだ。
  死んだのだろう。
  目覚めた時には血だらけの前身は凍える様に冷たく、
  身動きは一切出来なかった。
  喰われているのだと気づくも既に為す術はない。
  
  
  感覚のないまま己の身体を喰らう男を見ていれば、
  男が指先をの舌の上に乗せた。
  何も言わず、微笑んだまま。
  
  
  何も考えずその指先を噛み千切ったのが最期の記憶だ。
  次に目覚めた時には鬼となっていた。
  
  
  どうやらこちらが目覚めるのを待っていたらしい。
  男は目覚めるとは思わなかったよと呟き、俺は童磨だ。
  初めて名を告げた。
  
  
  
  「今日は月の綺麗な夜だね」
  「…！」
  「無力なお前の魅力も際立つ」
  「殺してやる」
  「お前が？」
  「………！！！」
  「どうやって？」
  
  
  
  鬼の身体は死なない。
  どれだけ切り刻まれても楽に再生する。
  
  
  見知らぬ女を喰らいながらこちらを犯す童磨は、
  苦痛と快楽を同じ分量同時に与える。
  正気を失う事が出来ない。
  
  
  大量の出血を伴いながら散々と犯された身体は飢え、判断力を狂わせる。
  
  
  さあ、。言って御覧。
  愛の言葉を言って御覧よ。いつものように。
  そうしたらこの若い娘を喰わせてあげる。
  腹が減ってもうどうにかなりそうだろう。
  早くお言いよ、。
  
  
  差し出された娘は鬼二匹に怯えきり、
  ガチガチと刃を震わせながら何事かを呟いている。
  
  
  
  「…強情だねェ」
  「…！」
  「まあ、いいけど」
  
  
  
  どうせ達せば我を忘れる。そんな我慢は無意味になる。
  分かってるだろう、。
  そんなものに意味はないと。
  
  
  緩々と腰を動かす童磨は頬を舐め、耳側で囁く。
  
  
  あの娘は君の妹だよ。。覚えているかな。
  朦朧とする意識の中、怯える娘はこの痴態を目の当たりにしている。
  気の狂いそうな饗宴を。
  可哀想に、可哀想に
  童磨はいつだってそう言い、こちらの全てを奪うのだ。
  
  
  
  
  
  
  
  

  リクエスト分、童磨裏、です

  大変遅くなり申し訳ありません

  童磨は何かこう…子供みたいな感じがするので

  のこのこついて行っても

  そういう展開にはならなさそうなんだけど

  結果ああ、やっぱそうなるよね～～？？みたいな

  そういう話にしました

  そんな気更々なさそうなのにあれ何かそんな感じになってる！

  みたいな、、、童磨脱いだら結構ムキってるし

  何そのギャップすごい性的！

  後半の展開は私の趣味です
  リク、ありがとうございました～！

  
  

  2019/09/23